竈(かまど)は関西においてはヘッツイ、またはクドと呼ばれます。ヘッツイのヘとは「戸」であり、大阪では竈ひとつを以て家一戸と数えられました。その竈は、家を守り繁栄させるだけでなく家族の健康や安全を祈願するための「家神」でもあったのです。大阪だけに限らず日本では古来、竈を生活の根源としてこれを尊び奥津彦・奥津姫の二神を竈神として祭りました。またこうした竈の神は、十二月の二十四日つまりクリスマスイブの夜に天に昇り、家の様子を報告に行くとも信じられてきました。 

 

 

三十石船で有名な枚方の「くらわんか舟」。その舟内で活躍していたのが小型の竈でした。冬期に煮物や名物のごぼう汁などを温かくして売りたいということから移動式の竈が活用されました。淀川の舟上で味わう枚方の小竈で炊いた御飯や料理。京阪を旅する人々の舌と心をさぞ魅了したことでしょう。

 

大阪食文化研究家

笹井良隆